昨年(2022年)米国の利上げにより株式市場はベアマーケット(弱気相場)となりました。しかし、2023年は一転して、利上げの目的であるインフレが落ち着きつつあるとの観測から、今後の利上げのペース減速・打ち止めが視野に入っています。年初来株式に逆風だった利上げが終われば、再び株式市場が息を吹き返すことが期待できます。
米国株はもちろんですが、特に新興国市場が注目される可能性が高いので、その理由と新興国投資で有望なETF(FM)を紹介します。
FMとはどのようなETFなのか、すぐに知りたい方は目次の「世界一分かりやすい図解(構成国・構成銘柄・セクター・組入比率)」をタップ(クリック)してください。
新興国株が注目される理由=ドルとの逆相関関係
新興国株はドル指数に影響を大きく受けます。
ドルインデックス(DXY) = ドルの相対的な指数
ドルインデックスとは、ユーロや日本円、スイスフラン等の主要通貨に対するドルの価格を指数化したものです。
私たちは日本で生活し、日本円を使って物を買うため、ニュース等では「ドル円で150円/ドルまで円安が進んだ」と言います。しかし、これだけではドルが上がっているのか、日本円が下がっているのかは分かりません。そこで、為替をドル円だけでなく、ユーロやスイスフラン等とも比較し、世界の為替がどのような動きなのかを分かりやすくしたものがドルインデックスです。
ドルインデックスが上がっていれば、アメリカドル以外の通貨に対して相対的にドルが上がっていると言えます。
ドルインデックスと新興国株の関係
下図はドルインデックス(DXY)と今回紹介する新興国株ETF(FM)を並べたチャートです。

ドルインデックスの動きを青矢印、新興国株ETFの値動きを赤矢印で示しています。ドルインデックスが上がると新興国株が下がる、逆にドルインデックスが下がると新興国株が上がると言った逆相関の関係があることが分かります。
この逆相関であることを可視化すると図下側のチャートとなり、これを相関係数と言います。この相関係数を見ると、ほとんどの期間でマイナス側に振れています。相関係数はプラスの場合は同じ方向に動き、マイナスであれば逆向きに動くことを表しています。このことからもドルインデックスと新興国株は逆の値動きをすることが分かります。
ドルと新興国株が逆相関となる理由
世界の資金は相対的に金利が高いところへ流れます。2022年3月から米国の利上げが始まったことで、ドルを持っているだけで貰える利息が増えることを意味しますので、高リスクの新興国株から低リスクなドルへと世界の資金が流れました。これによりドルインデックスが急上昇し、新興国株は急落しました。(QT:金融引き締めを合わせて実施していることで、市中に出回っているドルが回収され、ドルが減ることで、希少性が上がることも、合わせてドルインデックスが上昇する原因のひとつ)
今後の見通し

インフレ率は2022年7月の8.99%をピークに4か月連続で低下し、2022年10月は7.76%です。依然として高インフレではありますが、徐々に下がるのであれば、FRBは思い切った利上げ(0.50~0.75bp)をする必要がなくなります。通常の利上げは1回で0.25bpです。また、ツイッター社やメタ社のレイオフ(人員削減・解雇)を皮切りに他のこれまで市場をけん引してきたハイテク企業も同様な対応を迫られる可能性があり、設備投資の減少・失業率の上昇となれば、景気後退へとつながります。
このような状況下で、今後の利上げは限定的であり、景気後退となれば、利下げが視野に入ります。(すぐにではありませんが。)
利上げの打ち止めや利下げが行われると、利上げとは逆にマネーが流れることから、ドルは売られ、ドルインデックは下がり、ドルインデックスと逆相関の新興国株が上がると推測できます。
有望な新興国(フロンティア)株ETF【FM】を紹介
新興国ETFと言うと、VWOを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。VWOは新興国全体にまとめて分散投資できるETFですが、その中身は大半が中国・台湾となっています。中国は習近平氏によるハイテク企業・富裕層への締め付けが厳しく、倒産・上場廃止等リスクが高いため資金の流入先となる可能性が低いため、中国以外の新興国株を対象となるETFが好ましいです。そこで、今回紹介する新興国ETF「FM」が適切だと考えられます。
FMはブラックロック社の「iシェアーズ MSCI フロンティア & セレクトEM ETF」であり、新興国よりも小さい市場規模となるフロンティア市場を投資対象としています。そのため、中国・インド・ブラジルと言った市場の大きい新興国を含んでいません。FMを構成するのはベトナム・ナイジェリア・バーレーン等の普段投資対象として耳にしないような小さな国・企業となっています。構成銘柄をセクターと国別でツリーマップで表しました。
世界一分かりやすい図解(構成国・構成銘柄・セクター・組入比率)

長方形サイズ:組み入れ比率(サイズが大きいほど投資額が大きい)
色:国・地域(アジア圏=青、中東=緑、アフリカ&南アメリカ=赤)
ちなみに、具体的な数値でいうと
セクターは金融:44.7%、素材:9.9%、生活必需品:9.5%、不動産9.2%、エネルギー7.7%、通信6.9%…と続きます。
国としては、ベトナム:20.2%、ナイジェリア:9.9%、バーレーン:7.1%、ペルー:6.2%…となっています。
スプレッドシートでツリーマップを作る方法はこちらの記事で紹介しています。
FM | VWO(参考) | |
設定日 | 2012年9月12日 | 2005年4月3日 |
組入れ銘柄数 | 173社 | 5,574社 |
経費率 | 0.79% | 0.08% |
純資産総額 | 3.1億USドル | 858億USドル |
比較的新しく、経費率はちょい高め、規模は小さいETFであることが分かります。他のETFとサイズ感を比較するとこれくらいです↓
FMの市場規模(他のETFと比較したサイズ感)

非常に小さいので、例えば中国から少しだけ資金が流入するだけでも、かなり大きな値上がりが期待できます。
FMよりリターンの見込めるカンボジア
FMが期待できる理由として、規模の小ささを説明しました。カンボジアもまた、同様の理由で高いリターンが期待できます。
カンボジアの「GDP」(2021年度データ)
カンボジアの名目GDPは、26.31(10億USドル)で、世界108番目の経済規模となっています。
比較として、いくつか代表的な国をピックアップして紹介します↓
世界順位 | 国名 | GDP(10億USドル) | 参考(分類) |
1 | アメリカ | 22,996 | 先進国 |
2 | 中国 | 17,744 | 新興国 |
3 | 日本 | 4,932 | 先進国 |
6 | インド | 3,176 | 新興国 |
17 | インドネシア | 1,187 | 新興国 |
38 | シンガポール | 396 | 新興国 |
42 | ベトナム | 366 | FM組入れ |
47 | ルーマニア | 284 | FM組入れ |
62 | ケニア | 110 | FM組入れ |
96 | バーレーン | 38 | FM組入れ |
カンボジアはFMに組み入れられているフロンティアマーケットと呼ばれる国よりも、さらに小さい経済規模であることが分かります。このことから、少し注目を集めるだけでカンボジアにとっては大きな投資資金が流入することが簡単に予測可能です。
カンボジアが注目される3つの理由
①GDP成長率の高さ(過去35年平均6.7%、過去10年5.5%、将来5年間予測6.5%)

過去30年間は中国の成長が著しかったが、今後は成長鈍化。過去、将来ともにインドと同等のGDP成長率との見通し。
②人工ピラミッドの理想形

人工ピラミッドも理想的で、人工は増加していく見込み。
②カンボジアは東南アジア唯一の「米ドル」が主流
カンボジアは東南アジアで唯一、国内の商取引で米ドルを使用しており、米ドルが世界の基軸通貨であるため、投資資金が集まりやすい。
今がカンボジア投資の理想のタイミング
カンボジアは過去の内乱により、危険であるとのイメージがあることで、現在はまだ世界の投資家から注目が集まっていない。そのため、暴落のリスクが低い。(暴落は資金が集まったのちに起こるため)
現在、新興国への投資と言えば、中国やインドが代表的である。
→中国:政治的不安や人口減少
→インド:既に注目が集まりすぎている
そこでインドと同等の成長が見込まれており、これから注目が集まるカンボジアへの先行投資が最もリスクが低く、安定したリターンが期待できる。
カンボジア投資の手段
カンボジア低賃金で若い労働力が豊富であるため、これから外国企業が進出してくる。そのため株式ではなく、不動産が有力な候補となる(そもそもカンボジアETF・投資信託は良いものがない。。。)
その他新興国ETF
中国以外の新興国株へ投資するのであれば、「FM」以外にも「国別ETF」も選択肢としてあります。
✅インド:EPI,1678
✅ポーランド:EPOL
✅インドネシア:EIDO,IDX
✅ベトナム:VNM
✅タイ:THD,1559
✅メキシコ:EWW
✅韓国:EWY
✅トルコ:TUR
✅南アフリカ:EZA
✅マレーシア:EWM,1560
✅フィリピン:EPHE
✅ブラジル:EWZ,1325
まとめ
1.米国の利上げが終わると、新興国株が注目される。
2.今中国に投資はリスクが高い。
3.中国を含まない新興国株ETFであるため「FM」が有望。
「FM」の構成・ファンド情報
セクター | 組入比率 |
金融 | 44.7% |
素材 | 9.9% |
生活必需品 | 9.5% |
不動産 | 9.2% |
エネルギー | 7.7% |
通信 | 6.9% |
資本財 | 5.5% |
公益事業 | 2.9% |
ヘルスケア | 2.9% |
情報技術 | 0.7% |
一般消費財 | 0.3% |
国(上位10か国) | 組入比率 |
ベトナム | 20.2% |
ナイジェリア | 9.9% |
バーレーン | 7.1% |
ペルー | 6.2% |
ルーマニア | 6.1% |
カザフスタン | 5.6% |
バングラディッシュ | 5.6% |
エジプト | 5.5% |
モロッコ | 5.4% |
コロンビア | 5.0% |
FM | VWO(参考) | |
設定日 | 2012年9月12日 | 2005年4月3日 |
運営会社 | ブラックロック社 | ヴァンガード社 |
組入れ銘柄数 | 173社 | 5,574社 |
経費率 | 0.79% | 0.08% |
純資産総額 | 3.1億USドル | 858億USドル |
以上、フロンティアETF「FM」についてまとめてみました。投資の参考にしていただければ幸いです。
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